2月25日(木)に開催された本会議において、木山市長が平成28年度の施政方針を述べました。
(写真:本会議場で施政方針演説をする木山市長)
はじめに
平成28年度当初予算案のご審議をお願いするにあたり、私の市政運営に対する一端を申し述べ、議員各位並びに市民の皆さんのご理解、ご協力を賜りたいと存じます。
平成25年4月に庄原市長の重責を担わせていただき、早3回目の春が訪れようとしております。この間、多くの皆さんとの対話を重ね、要望やニーズの把握に努めながら、市民福祉の安定と向上、「やっぱり庄原がいちばん」と実感できる「まちづくり」に全力を注いでまいりました。
顧みますと、さまざまな課題や懸案事項に直面しながらも「庄原いちばんづくり」を掲げて市政運営を行うことができましたのは、議員の皆さんをはじめ、市民の皆さんのご理解、ご協力の賜物と深く感謝申し上げます。
昨年は、1市6町の合併から10年が経過するにあたり、市民憲章を制定するとともに「市制施行10周年記念式典」、「庄原いちばんフェスティバル」を開催し、多くの市民の皆さんに参加・交流をいただく中で、さらなる一体感が醸成されたものと実感いたしております。
また、市民の皆さんと夢や課題を共有しながら、本市の新たな10年を創造するための「第2期庄原市長期総合計画」、加えて、人口流出の抑制を目的とし、市域内で連携・強化すべき生活機能や地域の役割を定めた「庄原市定住自立圏形成方針」の策定に努めてまいりました。
さらに、国が最重要課題に位置付け、人口減少の克服と首都圏一極集中の是正を趣旨とする「地方創生」に呼応し、本市における将来人口や今後の基本施策を示した「庄原市人口ビジョン」および「庄原市まち・ひと・しごと創生総合戦略」をとりまとめたところでございます。
平成28年度は、これらの計画がスタートする、新たなステージの初年度であり、将来像や目標人口を実現するための礎となる、重要な1年になるものと認識しております。
こうした背景も踏まえまして、先の12月議会定例会で、ご議決いただきました「部制」の導入と新たな組織体制のもと、行政課題やニーズに迅速かつ的確に対処するとともに、「第2期長期総合計画」等を着実に推進してまいります。
「第2期長期総合計画」に掲げた将来像「美しく輝く里山共生都市」を実現するためには、これまで一貫して申し上げてまいりましたとおり、市民の皆さん、議員の皆さん、本市出身者などの縁のある皆さんと意識・課題を共有し、参画と協働による「まちづくり」を進めていくことが求められます。
自治振興区により培われました地域力をはじめ、新たにスタートさせた「ふるさと応援団」など「オール庄原」の力を結集し、新たな10年を見据えた市政運営に取り組む決意でございます。
本市を取り巻く社会情勢
次に、本市を取り巻く社会情勢でございます。
国においては、「地方創生への挑戦」を掲げ、特徴ある産物、豊かな自然、多彩な伝統文化などを生かした、地方の創意工夫を全力で支援するとしております。
本市におきましても、この度とりまとめました、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づく効果的な事業を提案し、国の支援を確保してまいりたいと考えております。
また、昨年10月に環太平洋連携協定いわゆるTPP交渉が大筋合意され、今月4日には、参加12カ国の署名に至っておりますが、農畜産物および木材の関税引き下げや撤廃は、農林業を基幹産業とする本市に、どのような影響を与えるのか予断を許さない状況でございます。先般、広島県が公表した県内農林水産物への影響では、本市にも関わりの深い牛肉・豚肉・鶏卵の生産額が、年間11億円以上減少するとの試算も示されており、引き続き、関係機関との連携を図りながら最善の対応に努めてまいります。
広島県政に目を向けますと、昨年、社会経済環境の変化等を踏まえ「ひろしま未来チャレンジビジョン」が改定されました。知事は、平成28年度県政運営の基本方針において、このビジョンに基づき「市町と一体となった観光地の価値向上」や「和牛肉の生産拡大」、「県産材のシェア拡大」などを重点とした取り組みを進めるとともに、「中山間地域における地域力強化」を明言されていることから、本市といたしましても、あらゆる機会をとらえて積極的な施策提言を行ってまいります。
市政運営の基本方針
次に、新年度の市政運営における、基本的な方針を述べさせていただきます。
まず、第1に「第2期長期総合計画」に基づく施策展開でございます。
この計画は、本市における最上位の行政計画として、平成26年度より策定作業を進めてまいりました。庁内会議に加え、学識経験者、公共的団体や各地域の代表者など25名で構成する審議会を設置し、さまざまな視点での議論を経て、昨年11月に答申をいただいております。
また、議会におかれましても長時間にわたる調査をいただき、この度、最終案をとりまとめ、提案の運びとなったところでございます。
本市の人口は、昭和22年の約9万2千人をピークに減少が続き、国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、10年後の平成37年には、3万2千人を下回ると見込まれております。
こうした現状を踏まえ、人口の減少は、さらなる人口減少を招く要因であるとともに、行政、地域、市民生活に悪影響を与え、市民アンケートでも多くの方が懸念されていることから、本市の最重要課題は「人口の減少」であることを改めて認識し、基本構想・基本計画の策定に努めてまいりました。
骨格をなす基本構想におきまして、10年後の目指すべき、まちの姿・将来像を「美しく輝く里山共生都市~みんなが"好き"と実感できる"しょうばら"~」といたしました。
それぞれのキーワードには、人口減少に起因する多くの課題に立ち向かい、将来に希望を持ち、活力ある庄原市を創造するという強い意志・願いを込めております。
また、重要な指標となります10年後の目標人口は、合計特殊出生率の上昇、社会増減の改善を前提として、推計人口を約3%上回る「3万2千700人以上」と設定いたしました。
わが国全体が本格的な人口減少社会を迎え、今後も長期にわたる減少が指摘される中、審議会でも賛否両論さまざまな意見がございましたが、本市における人口の推移や年齢階層別の動向などを整理・分析し、市民の皆さんと行政が意識を共有しながら、達成しようとする実現性のある数値としたところでございます。
全国の自治体が一斉に「地方創生」への取り組みを進める中、ハードルの高い数値ではございますが、今日の厳しい現実を受け止め、市民の皆さんと知恵を絞り、汗をかき、行動を起こしながら、目標達成に向けて総合的な取り組みを進めてまいります。
第2は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」および「定住自立圏形成方針」でございます。
いずれも、人口の減少を抑制しようとする、国の制度に応じた基本計画でございますが、「総合戦略」につきましては、「しごと」と「ひと」の好循環を「まち」が支えるという発想のもと、全国ほとんどの自治体が策定しております。
本市におきましては、「しごとの創生」として、地域産業の振興と起業の支援を基本施策に掲げ、「ひとの創生」では、転入促進と若者の活動支援、結婚・出産・子育ての希望実現を、さらに、「まちの創生」として、生活の充実と安心な暮らしを基本施策とする中で、本市には本市の魅力があることを常に意識しながら、庄原創生に挑戦してまいります。
一方、「定住自立圏形成方針」は、複数地域における生活機能の強化やネットワークの推進、役割分担などによる転出の抑制を基本としており、庄原・東城市街地を都市機能の拠点および準拠点区域に、他の支所周辺を地域拠点区域に設定し、それぞれの区域に応じた機能を付与することで、一体的な人口減少対策を進めてまいりたいと考えております。
具体的には、医療や福祉、生活交通や上下水道など、安心や利便性を享受しながら、住み慣れた地域で暮らし続けることができる、一定水準の生活機能を各地域に確保するとともに、市街地拠点区域には、より高度な機能を備えることで、市域内で生涯を送ることのできる環境を維持してまいります。
第3は、「庄原いちばんづくり」の推進でございます。
市長に就任以来、「地域産業」、「暮らしの安心」、「にぎわいと活力」を柱とした事業を展開し、相乗効果による好循環の形成を図ることで「やっぱり庄原がいちばん」と心から実感できる「まちづくり」に挑戦してまいりました。
新年度は「第2期庄原いちばん基本計画」の最終年度となることから、引き続き、着実な事業実施に努めてまいりますが、とりわけ、新たな施策・事業につきましては、スピード感をもって取り組んでまいります。
ひとつは、「地域産業」および「にぎわいと活力」を一段と加速させるため、昨年9月に公表いたしました「比婆いざなみ街道物語」と銘打った「北部資源活用計画」の推進でございます。
本市の北部地域には、比婆道後帝釈国定公園に代表される豊かな森林と渓流を有し、雄大で美しい風景が受け継がれているほか、昔から伝えられた神話や伝承の地も数多く所在しております。加えて、比婆牛、米、野菜、りんごなど、伝統と歴史に裏打ちされた多彩な農畜産物が生産されております。
こうした地域の魅力と資源に光を集め、それぞれをつなぐことで、全域を輝かせるため、街道沿線の森林整備や桜の植樹、間伐材を利用した案内看板の設置、比婆山・熊野神社の解説書およびドライブマップの作成などに加え、2名の地域おこし協力隊員を配置して、積極的な施策展開と情報発信に努めてまいります。
もうひとつは、この度策定いたしました、「高齢者向けコンパクトシティ推進構想」に基づく「暮らしの安心」を確保する取り組みでございます。
この構想は、コンパクトシティから連想されます「集落を移転し効率性を高める」といった一般的な視点ではなく、今後の人口減少・超高齢化の進行を見据えて「高齢者の皆さんが、生涯にわたり住み慣れた市内で安心して、暮らし続けることのできる環境づくり」について、基本的な考えを取りまとめたものでございます。
まずは、西城地域・比和地域におきまして、雪深い冬の間に安心して生活できる「高齢者冬期安心住宅」の整備に着手することといたします。その後、他の地域につきましても、ニーズにマッチした関係事業に取り組んでまいります。
予算編成の基本方針
続きまして、当初予算の概要について、ご説明申し上げます。
将来も見据えた持続可能な財政運営を行うための「財政計画」を基本としつつ、「第2期長期総合計画」の将来像に掲げました「美しく輝く里山共生都市」の実現、さらには、「心のいちばん」へとつながる予算編成に努めたところでございます。
歳入のうち、普通交付税につきましては、2年目となる合併算定替による特例措置の段階的な縮減や、基礎数値となる人口が、昨年の国勢調査結果に基づき減少することなどが影響し、平成27年度当初予算との比較で約10億円の減額を見込んでおります。
一方、市税につきましては、給与所得者数の減少に伴う個人市民税の減収が見込まれるものの、一部業種において設備投資の動きがあることから、法人市民税などの増加を見込んだことにより、トータルでは平成27年度を上回ると想定いたしております。
また、公債費負担適正化計画の範囲内で、財政上有利な「過疎対策事業債」や「合併特例債」の充当に加え、「地域振興基金」の活用などによって財源確保を図ったところでございます。
歳出では、社会保障費の増加や人口減少対策の柱となります、子育て支援事業などの充実に加え、安心安全な「まちづくり」に欠かすことのできない、災害防除並びに橋梁の長寿命化等に関する予算を増額いたしております。
一方、計画的な市債発行に取り組んできた結果を受けまして、公債費は大幅な減額に至ったところでございます。
なお、事業内容の精査等による歳出削減にも努めてまいりましたが、歳入歳出の収支がマイナスとなることから、やむなく財政調整基金の一部取り崩しを見込んでおります。
厳しい財政状況ではございますが、「第2期長期総合計画」元年を迎え、新たな一歩を踏み出すにあたりまして、「庄原が好きと実感できる」心のいちばんへとつながる予算編成ができたものと考えております。
以上の結果、平成28年度一般会計の予算規模は、平成27年度対比で、2%減の305億5,785万4千円となり、特別会計および企業会計を加えた全体の予算規模でも、0.6%減の477億7,092万8千円となったところでございます。
平成28年度主要施策について
それでは、「第2期長期総合計画」に掲げました5つの基本政策別に、「いちばんづくり事業」のほか、主な施策・事業をご説明申し上げます。
"絆"が実感できるまち(自治・協働・定住)
まず、自治・協働・定住の分野「"絆"が実感できるまち」でございます。
新たな時代のまちづくりを進めるにあたり、これまで以上に、自治振興区をはじめとする多様な主体との協働が求められる一方で、地域における高齢化や担い手不足などの実態を踏まえた支援が必要と認識いたしております。
また、一定人口の維持は、地域存続の視点からも強く要請されており、帰郷定住・新規転入の促進に関し、家庭や地域、企業、行政など、オール庄原での取り組みを推進してまいります。
具体的な取り組みのうち、
「自治・協働の推進」では、自治振興センターの計画的な改修のほか、地域おこし協力隊員を新たに6名配置し、比婆いざなみ街道物語の推進をはじめ、有害鳥獣対策や特産品開発等の事業促進に努めてまいります。加えて、県立広島大学庄原キャンパスとの連携による、学生や教職員の感性・知識を「まちづくり」に活かす仕組みを創出してまいります。
「人権尊重社会」および「男女共同参画社会」の実現に関しましては、講演会の開催や啓発事業の充実による意識の高揚と人権教育の推進、女性相談員の設置によるDV被害者の相談・支援に取り組むほか、新たな「男女共同参画プラン」の策定に着手することといたしております。
「定住の促進」では、若者を雇用した事業主、家業の後継ぎや起業した若者を応援する奨励金の交付、住宅整備の一部助成とともに、里山スタイル新生活創造事業を継続してまいります。
このほか、「空き家バンク制度」への民間活力の導入、転入希望者や転入者の相談・フォローに対応するコンシェルジュ3名の増員など、きめ細かな支援を拡充することといたしております。
また、結婚を希望する皆さんへの支援として、カップル誕生から成婚へ、さらには定住への期待を込めました「しょうばら縁結び事業」をスタートし、自己啓発や出会いの場の提供に努めてまいります。
「効果的・効率的な行財政運営」では、組織全体の基礎的能力の向上を目的とした、テーマ別集合研修を取り入れ、職員研修の充実を図ってまいります。
市税等に関しましては、公平な市民負担を確保する観点から、より一層の滞納対策、収納率向上に努めてまいります。
また、本市の魅力を全国へ発信し、知名度を高める「シティプロモーション」の新たな展開として、テレビ番組の活用を計画しております。
"にぎわい"が実感できるまち(産業・交流)
次に、産業・交流の分野「"にぎわい"が実感できるまち」でございます。
地域産業は、市民生活の基盤であるとともに、にぎわい創出や経済循環の根幹を成す営みであり、安定的かつ時代に合わせた成長が求められます。
本市の基幹産業であります農林業の衰退は、地域経済の循環を変化させ、農村環境の悪化、集落の人口減少など、地域づくりに大きな影響を及ぼすことから、農林業の再生に努力してまいります。
商工業では、事業所の縮減や市街地の活力低下が顕在化しており、また、観光においても、観光客数に回復の兆しが見えるものの、消費額は伸び悩んでいることから、農林業と商工業、観光が融合・連携した新たな産業形態の構築に取り組んでまいります。
具体的な取り組みのうち、
「農林水産業の振興」では、新たな「農業振興計画」に基づき、本市の基幹産業が将来にわたって持続的に発展していく施策を重点的に実施してまいります。
まず、農業分野では、近年、全国のコンクールで、庄原産の「こだわり米」が高い評価を受けている実績を踏まえ、さらなる販売促進やブランド化を後押しするほか、昨年、認定を受けました「どぶろく特区」を活用し、どぶろくの製造に必要な機器の整備支援を開始いたします。
さらに、広島県が本市で取り組む「大規模キャベツ生産団地構想」に同調し、団地の整備支援、参入企業との協定に基づく事業推進に努め、地域経済への波及効果を生み出してまいります。
有害鳥獣対策では、農作物への被害軽減策の継続に加え、捕獲したイノシシ等を食資源「ジビエ」として活用するため、捕獲から流通までの体制づくりに着手いたします。
畜産の分野につきましては、商品価値を高める「比婆牛ブランド」の確立・定着に関し、市場出荷頭数の増加など、地道な取り組みが徐々に効果を見せ始めております。引き続き、地域団体の商標登録に向けた積極的なPR活動、「比婆牛素牛」および「あづま蔓」の増頭支援に努めてまいります。
また、市内産の飼料用米・飼料用稲を活用した混合飼料・乳酸発酵米を製造する工場の誘致を進め、和牛農家の経営安定化や地域資源の有効活用のみならず、新たな雇用確保につなげてまいりたいと考えております。
林業の分野では、県内最大の森林面積を有する本市にとりまして、豊富な森林資源を活用した産業の振興・活性化が大きな課題と認識いたしております。
持続的な林業経営、森林整備や木の駅プロジェクトに取り組む個人・団体への支援に加え、有効・有益な事業の可能性について、企業等の協力と連携を得ながら検討してまいります。
「商工業の振興」では、設備投資や融資制度等の助成を継続するとともに、市内約1,300の事業所を対象に実施いたしましたアンケートの結果・分析に基づき、効果的な中小企業支援に取り組んでまいります。
また、企業誘致につきましては、交通アクセスの優位性や超高速ブロードバンド環境、豊富な農畜産物や森林資源など、本市の強み・特性を前面に出し、組織横断的な連携のもと、粘り強く働きかけてまいります。
観光交流の推進」では、「観光振興計画」に基づき、花と緑のまちづくりや体験型教育旅行の誘致など、本市の基盤を生かした観光地域づくりを推進するとともに、多言語版パンフレットの作製や、ふるさと大使の協力によるPR番組のテレビ放送など、観光プロモーションを充実してまいります。
そのほか、10年ぶりの国内出身力士の優勝で大相撲が注目を集める中、関係各位のご尽力により、10月26日の「大相撲庄原場所」開催が決定いたしました。多くの皆さんの観覧・交流により、にぎわいを創出できるよう準備を進めてまいります。
"快適な暮らし"が実感できるまち(環境・基盤・交通・情報)
次に、環境・基盤・交通・情報の分野「"快適な暮らし"が実感できるまち」でございます。
近年の田園回帰志向を好機と捉え、この地を訪れ・この地に暮らす誰もが、住み良いまちと感じることのできる生活基盤を、それぞれの地域や場所に応じて整備してまいります。
また、交通の分野では、公共交通の利用者減少が利便性の低下を招いており、利用の促進と利便性向上の視点を持った対応に努めてまいります。
情報通信の分野におきましては、光ファイバー網の整備に併せ、市民と行政の情報共有、安心で便利な暮らしへの応用や若者の定住促進など、多面的かつ多様な活用を検討してまいります。
具体的な取り組みのうち、
「道路網の整備」では、新たに策定いたしました「道路整備基本計画」に基づき、新規着手予定の5路線を含む、計40路線の市道改良を進めつつ、既存の道路施設等につきましては、計画的な維持修繕によって長寿命化を推進し、利便性と安全性の確保に努めてまいります。
「情報通信基盤の整備」では、昨年10月から庄原・東城の一部地域で、順次、利用を開始いたしました超高速情報通信網の整備を継続するほか、この光ファイバー網を使用した公共施設への公衆無線LAN整備に着手し、「Wi-Fi」によるインターネットへの接続環境を充実することで、市民・観光客の皆さんの利便性向上につなげてまいります。
「上下水道」の分野では、計画区域における上水道拡張事業、合併処理浄化槽の整備を継続するほか、老朽施設の計画的な更新・長寿命化に取り組み、安定的な水の供給と水質保全、快適な生活環境の維持・改善を図ってまいります。
なお、水道料金および下水道使用料につきましては、人口や事業所数の減少に伴う料金収入の減少、老朽化に対応した施設維持費の増加等に起因し、歳入歳出のバランスが悪化傾向にあることから、やむなく料金の改定をお願いすることといたしました。
今後とも、計画的かつ効率的な事業運営に心がけてまいりますので、ご理解を賜りたいと存じます。
「生活交通の充実」では、新たな「生活交通ネットワーク再編計画」を基本とし、公共交通の利用促進を図りつつ、多様な運行形態の組み合わせにより、日常生活に必要な移動手段の確保に努めてまいります。
「住宅施策」では、東城地域で川西公営住宅の建替に着手するとともに、「空き家等対策計画」に基づき、利活用を含めた空き家の適正管理に取り組んでまいります。なお、近隣への被害が懸念されます老朽建物につきましては、解体・撤去の助成制度を新設し、安全な住環境を確保してまいります。
「市街地の活性化」では、「庄原駅周辺土地区画整理事業」および「都市再生整備事業」を計画的に進め、都市基盤の整備と市街地の環境充実に努めてまいります。
「生活の安全確保」では、防火水槽や消火栓などの消防設備の充実、常備消防高野出張所のポンプ車更新等を予定するほか、「消費生活相談員」および「生活安全相談員」の配置を継続し、相談対応や情報提供に努めてまいります。
「平和事業の推進」では、戦後70年という節目の年を経て、改めて恒久平和の実現と核兵器の廃絶を心に刻む中で、セミナーやパネル展などの啓発事業に取り組むとともに、平和首長会議等を通じて、平和な社会の持続を働きかけてまいります。
「環境衛生の充実」では、「環境基本計画」に基づき、環境保全および循環型社会の構築に取り組むほか、平成30年度の完成に向け「庄原市斎場」の造成工事に着手することといたしております。
"あんしん"が実感できるまち(保健・福祉・医療・介護)
次に、保健・福祉・医療・介護の分野「"あんしん"が実感できるまち」でございます。
今後、75歳以上の後期高齢者人口、高齢者のみ世帯の増加が推測されることを踏まえ、健康増進と介護予防の取り組みを強化するとともに、市民協働の体制構築に努めてまいります。
また、「子どもは地域の宝」であることを念頭に、時代の変化やニーズに即した多様な視点での子育て支援に取り組んでまいります。
具体的な取り組みのうち、
「子育て支援」では、中学3年生までの「医療費助成」と「第3子以降の保育料無料化」を継続するとともに、多子世帯を対象とした、新たな負担軽減策として、同時入所の有無等に関わらず「第2子の保育料を半額」といたします。
また、すべての保育所で土曜日の午後保育を実施するほか、山内保育所の耐震改修の完成により、保育所および小・中学校のすべてが耐震基準を満たすこととなっております。
「高齢者の自立支援」では、「高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、関係施策を推進してまいりますが、とりわけ、超高齢社会への対応と、医療・介護・生活支援がバランス良く機能した「地域包括ケアシステム」を充実させるため、「地域包括支援課」を新設いたします。
また、介護職員の人材確保と定着、スキルアップを目的とした研修受講費用の助成制度を創設することといたしております。
「障害者の自立支援」では、「障害者差別解消法」の趣旨を踏まえ、障害に対する理解を深める研修や啓発事業を継続するほか、障害者関係団体への助成を拡充し、障害者福祉活動の充実に努めてまいります。
「地域福祉の向上」では、新たな「地域福祉計画」に基づき、協働ネットワークの構築と、多様な主体の役割分担による生活課題への対応、誰もが安心して暮らすことのできる地域づくりに取り組んでまいります。
「健康づくりの推進」では、「健康づくり計画」および「食育推進計画」に基づき、健康意識の醸成や健康寿命の延伸、食を通じた生活習慣病予防などに取り組んでまいります。
なお、平成29年度の完成を目指し、健康増進施設「あけぼの荘」の改築事業を本格化することといたしております。
「医療の充実」では、まずもって、市内で子どもを産み育てる基盤となります「産科医療の再開」が喫緊の課題と認識しており、引き続き、関係機関と連携しながら、粘り強く取り組んでまいります。
加えて、庄原赤十字病院における高度医療の確保、地域に欠かすことのできない診療所の機器更新などにより、安心を実感できる医療環境を維持してまいります。
また、西城市民病院では、経営改善に取り組む一方で、設備更新による良質な医療の提供、訪問リハビリの体制強化による在宅支援の充実に努めることといたしております。
「社会保障制度関係」では、「生活困窮者自立支援法」に基づき、生活保護に至る前段の支援策として「相談支援」や「住居確保給付金」の支給を継続してまいります。
また、国民健康保険および介護保険を適正に運用するため、生活習慣病予防や、新たな介護予防策として取り組んでおります「シルバーリハビリ体操」の普及拡大に努め、医療費の抑制につなげてまいります。
"学びと誇り"が実感できるまち(教育・文化)
最後に教育・文化の分野「"学びと誇り"が実感できるまち」でございます。
教育は、一人ひとりの多様な個性・能力を開花させ、社会の発展を実現させる基盤でございます。とりわけ、次世代を担う子どもたちが、庄原で生まれ、学び、育つことに誇りを感じ、家族やふるさとを愛する心を培うことのできる教育を、創造してまいります。
また、市民の皆さんが生涯にわたって主体的に学び、健康で心豊かな生活を営むことができるよう、学習活動、文化・スポーツ活動を推進してまいります。
なお、教育・文化の施策につきましては、新たに策定いたしました「教育振興基本計画」に基づき、実施することといたしております。
具体的な取り組みのうち、
「学校教育の充実」では、外国語指導助手を増員して児童生徒の英語力向上を図るとともに、グローバルな人材育成を目的としたイングリッシュキャンプの継続実施を予定しております。
また、「中学校合唱コンクール」は、生徒の感性を高め、豊かな情操を育むとともに、同世代の一体感が「ふるさと愛」につながる取り組みとして定着させてまいります。
施設整備では、庄原小学校の屋内運動場の改築のほか、学校施設の老朽化・長寿命化対策等を計画的に進め、教育環境の充実・改善を図ることといたしております。
「生涯学習・社会教育の充実」では、特色ある放課後子ども教室となるよう、県立広島大学の学生に指導補助を依頼するほか、引き続き、各自治振興区に生涯学習事業を委託し、振興区活動との一体的な取り組みをお願いすることとしております。
また、「子どもの読書活動推進計画」を策定し、読書意欲の醸成および読書環境の充実を図ってまいります。
「芸術・文化の推進」では、地域文化振興事業や文化活動団体への支援を継続するほか、市内で発掘された貴重な出土品を収蔵・活用する施設として、旧田川小学校の改修整備を計画しております。
「スポーツの推進」では、新たな「スポーツ振興基本計画」の策定に着手するとともに、庄原アスリート育成事業の実施、各種スポーツ大会への支援などを継続し、年齢・性別を問わず心身の健全育成を推進してまいります。
「家庭・地域の教育力向上」では、小・中学校での取り組みを発信する「教育フォーラム」を継続するほか、学習講座や講演会の開催、学校・家庭・地域の連携による世代間交流事業を充実し、学校・保護者のみならず、地域を交えた教育力の向上に努めてまいります。
おわりに
以上、平成28年度の主な施策・事業についてご説明申し上げました。
冒頭にも触れましたとおり、新年度は、「第2期長期総合計画」のもと、将来の庄原市を築く大切な1年であると認識いたしております。
「美しく輝く里山共生都市」へとつながる道、成長を続けるまちと同様に、市政運営に終わりはございません。
社会環境の変化を的確にとらえるとともに、課題への対応を常に意識した「まちづくり」を持続する視点から、中長期を展望した、いくつかの重要な課題・取り組みについて述べさせていただきます。
まず、公共施設の再編・再配置を含む、総合的なグランドデザインでございます。
公共施設等総合管理計画でもお示ししておりますとおり、今後、すべての公共施設を対象として設置目的や役割、将来の見通しなどを分析し、あるべき姿を検討してまいりますが、特に中心市街地に立地する庄原市民会館・庄原自治振興センターは、老朽化が顕著であることから、近い将来、整備の方向性を決断しなければなりません。
当然に、市民の皆さんのご意見もいただく中で、慎重な対応が求められるところでございますが、全市的なまちづくりや市街地の機能強化、他施設との関係や最適な配置などを含め、総合的に判断したいと思うところであり、新年度から調査・検討に着手してまいります。
2点目は、合併以後で最大の施設整備となります、新たな「ごみ焼却施設」への取り組みでございます。
この施設は、自治体が整備すべき市民生活に欠かすことのできない施設であると同時に、事業費が極めて膨大となることから、他の事業に大きな影響を与える施設でもございます。
新年度より整備場所を含めた具体的な検討に着手し、市民・関係者の皆さんへの丁寧な説明に努め、ご理解をいただきながら事業を進めてまいります。
最後に、国営備北丘陵公園内の施設を活用した「情報と魅力の発信拠点づくり」でございます。
丘陵公園は、年間約50万人の集客を誇る市内最大級の観光施設であり、本市にとりまして極めて貴重な施設でございますが、一方では、市として、これだけの集客力を、市街地のにぎわいや他の観光地への誘導などに、十分には生かし切れていないと感じております。
以前から、北入口のエントランスセンターを、市街地や他の観光施設に誘導・誘客するための情報と魅力の発信拠点として活用したいと考えておりましたが、先日、所管されます国から前向きなアドバイスをいただきましたので、活用計画の作成および実現に向けた課題の整理と対応の検討に取り組んでおります。
国営公園内の施設を自治体が活用する事例は、全国的にも稀と伺っておりますが、本市の多様な魅力を、多くの来園者に、直接、伝えることが可能となりますので、市街地への誘導のみならず、他の市内観光地への案内を重ねることで、新たな観光振興への扉が開かれるものと考えており、実現に向け最善を尽くしてまいります。
最後になりますが、市政を預かる責任者として、「庄原が好き、やっぱり庄原がいちばんええよのぉ」と思えるまちづくり、「心のいちばん」を希求する初志を忘れることなく、引き続き、庄原市の発展に全力を傾注することをお約束し、私の施政方針といたします。
議員各位、並びに市民の皆さんのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。