3月4日(火)の本会議において、滝口市長が平成20年度の施政方針を述べました。
(写真:本会議場で施政方針演説をする滝口市長)
平成20年第1回庄原市議会定例会の開会に当たり、市政運営に取り組む所信の一端を申し上げ、議員各位並びに市民の皆さんのご理解・ご協力を賜りたいと存じます。
平成も20年という節目の年を迎え、誰しも「ときの流れ」を感じておられると思いますが、私自身、昭和53年に旧庄原市の市議会議員として初当選以来、議員の立場、市民の立場、また、市長の立場で「ふるさと」を見つめ、「夢」を語り、地域の振興と発展に努力してきた半生を振り返っております。
特に、ここ数年は、初代市長として合併直後のまちづくり、市政運営を託された責任を痛感する日々でございますが、新年度が現在任期の最終年度でもあることから、これまでの成果と課題を検証しつつ、強い決意を持って臨む覚悟でございます。
昨年7月の参議院選挙において自民党が大敗し、「ねじれ国会」「逆転国会」と呼ばれる不安定な国会構図が生まれる中で、「美しい国づくり」を掲げた安倍内閣は、1年を待たずして退陣。福田新総理のもと、期待と不安が交錯する「背水の陣内閣」が誕生いたしました。自民党が議席を減らした要因のひとつに、構造改革の延長線上に浮かび上がる「都市偏重」、「農村切り捨て」の政治姿勢が指摘されており、図らずも、繰り返し申し述べております「都市と農村が役割を担い、相互関係を守り続けることが健全な国土構造、美しい日本を取り戻す第一歩である」との主張が、まさに国民の声であることを裏付ける結果となっております。
また、昨年末、2007年の世相を表す漢字が「偽(いつわり)」に決定し、多くの国民が憤りと残念な気持ちで1年を思い返しました。生産地、原材料、賞味期限などの食品偽装をはじめ、消えた年金記録や政治活動費の虚偽申告、人材派遣会社の偽装請負や英会話学校の契約違反、今年に入っても再生紙の古紙配合率に係る業界ぐるみの偽装事件など、複数の業種・分野でさまざまな「偽」が発覚し、政治、大企業、さらには社会に対する不信感を増幅させております。
誰しも、意に反して間違いや失敗を犯す場合がございます。しかし、孔子の言葉にもありますように「過(あやま)ちて改めざるこれを過ちという」のとおり、犯してしまった過ちを、間違いと知っていながら悔い改めず、逆にごまかし取りつくろう行為が横行する背景には、市場競争、経済効率一辺倒に傾斜した現代社会の歪(ひずみ)があるように思えてなりません。「地域格差」「生活格差」に象徴される「格差社会の現実」も、決してそのことを是とし、望んだ結果とは思いませんが、国政の一部に誤りがあったのであれば、その責任を真摯に受け止め、早急な改善・対応を図るよう、強く要請するところでもございます。
こうした中、平成21年度末で失効する「過疎地域の特別措置法」、今国会で議論されております「道路特定財源にかかる暫定税率」の行方は、国・県に多くの財源を依存している本市にとって将来展望を左右しかねない憂慮すべき問題であり、特に、道路特定財源は、地域活性化に資する高速道路への期待、安全・安心の確保に極めて重要な市道整備等へ直接的な影響を与えるだけでなく、間接的には、保健・福祉・教育など、他分野への波及も容易に想定できることから、中山間地域の切実な声、貴重な財源として、その継続が強く求められております。
国会が揺れ、株価が迷走し、格差が広がる不安定な社会経済環境のもとで、過疎化や少子高齢化の進行、基幹産業の衰退、厳しい財政状況をはじめ、産科医師の不在や制度改正に伴う保健・福祉分野での対応、老朽化が指摘される学校・保育施設、都市部との格差が際立つ情報基盤の整備など、各分野に及ぶ地域特有の課題は、年々、深刻化しているのが実情でございます。
これら本市が抱える深刻な課題に対して、特効薬を見つけ、直ちに完治させることは困難と言わざるを得ませんが、できることから実行し、小さな成果を集め・重ねることで花を咲かせ、また次の種をまきながら未来を切り開いてまいります。
私は、市長就任に際し、「一体感の醸成」を図る中で「一体的な発展」をめざすことが、新市の進むべき方向であるとの認識をお示しいたしました。
一体感の醸成は、市民一人ひとりの「想い」や「感情」で判断される面もございますが、合併協議における47の確認項目のうち、「当面、現行のとおり」とした施設使用料や生活バスの運行方法、一部の補助金や手数料などに関し、合併後3年が経過する中で内容・基準の統一化を図り、地域差の解消に努めてまいりました。また、本庁・支所の組織機構につきましても、合併直後における市民サービスへの影響回避と事務事業の円滑な移行を考慮した体制から、合併時に確認した基本方針を踏まえ、効率的かつ効果的な行政運営、事務処理の迅速化や専門的なサービス提供、さらには戦略的な地域経営の推進を図るべく、部制の終了、課の新設、一部事務の本庁集約を含む新たな体制へと変更することといたしました。
こうした制度の統一化や行政機構の見直しに加え、企業・団体における活動や組織形態、地域間交流の状況などを見ましても、年を追うごとに「合併したんだな」「ふるさとを共有しているんだな」という市民意識が定着しつつあるように感じております。
一方、一体的な発展は、均一的・画一的な地域整備を意味するものではなく、旧市町に所在する資源や魅力、個性などを活かして地域づくりを行い、市域全体がまとまりをもって発展することを意図しております。
保健・福祉・医療・教育など、行政として提供すべきサービスは、当然に同様でなければなりませんが、地域資源の活用策をはじめ、道路や施設、都市基盤の整備等の面では、全体を見据え、それぞれの実情・実態に即して実施しなければならない事業もございます。
長期総合計画の中では、この一体的な発展を、ぶどうの房を意味する「クラスター型の未来都市づくり」と記述しておりますが、総合計画の実施計画に沿った施設・基盤の整備のみならず、その理念・構想に基づいて、新年度から各支所管内を対象とした特徴的な事業実施を予定しております。現在、支所長を中心に企画・調整作業を進めておりますので、ご協力をお願い申し上げます。
農林業を本市の基幹産業として位置づける中で、市域内の経済構造を農林業起点の循環システムへと再構築し、心豊かな暮らしや地域文化を復活・再生すべく「みどりの環経済戦略ビジョン」を掲げ、平成18年度から3つのプロジェクト事業を推進しております。
ひとつには、「木質バイオマス活用プロジェクト」でございます。
半世紀ほど前、豊富な森林資源は、焚き木を束ね、薪(まき)を割り、炭を焼くことで人々の生活、さらには地域社会をも支えておりましたが、より効率的な新資源への急激な移行、いわゆる「エネルギー革命」によってその需要は消失し、山に入る人影は薄れ、美しい里山の風景までも失われつつあることは否定できません。しかし、原油価格の高騰や地球規模での環境問題に注目が集まる今日、まさに「時代は繰り返す」のとおり、再び森林や木材が有する多様な機能・エネルギーがクローズアップされ、各国・各地域において、化石燃料に代わる新たなエネルギーとしての資源開拓、新産業の創出を視野に入れた開発競争が展開されております。
こうした時代の要請、新たな需要の発生は、豊かな森林資源を有する本市にとって紛れもない好機であり、特に木質バイオマスの活用に関しては、今年度、民間企業との連携によるエタノール製造の実証実験棟の整備、東城リフレッシュハウスへのチップボイラーの導入が実現したほか、新年度において、未来の燃料として期待されるバイオエタノール、植物性プラスチックとして利用が見込まれるリグニン、ディーゼルエンジンから排出される有害物質を除去する「排ガス浄化溶液」など、いずれも木材を原材料とする付加価値の高い工業製品の製造工場が建設予定となっており、次の段階に向けて確実な歩みを進めております。
また、木質バイオマスの優位性を普及・啓発し、地域の新産業として認知され、事業化への速度をさらに加速するためには、より身近な場面で木質燃料に触れる機会を設定するとともに、需要・消費の拡大を図る必要がございます。ペレットを燃料とするストーブ、ボイラーを小学校、公共施設、新庁舎等へ設置・導入するほか、木材収集・製造・販売に係る低コスト化への取り組みなど、市民の皆さんや地域にとって有益な事業化をめざしてまいります。
次に、「農業自立振興プロジェクト」でございます。
本市の農業は、主要作物であるコメをはじめ、野菜、果樹、牛、鶏など、多種・多品目におよび、近年、その生産形態も個人、グループ、集落法人、企業など、地域や農家の状況に応じて多様化しております。また、国の政策転換や過疎化・高齢化に伴う耕作放棄地の増加、農産物価格の下落と経営経費の高騰、イノシシ被害や風雪災害など、基幹産業を取り巻く環境は、国・地域の課題と相まって、複雑かつ厳しい方向に推移しているのが実情でございます。
ここを塞げば、あちらが吹き上げ、あちらを塞げば、ここから漏れ出す。ともすれば空しい愚痴がこぼれる状況にありましても、決して、逃げたり諦めたりはいたしませんし、日本の食料自給率が40%にまで低下した現状、輸入食品への不安が募る昨今の報道を強い危機感をもって受け止めており、地域の発展、さらには国家繁栄の基礎となる農業の再興に、不退転の決意をもって取り組んでまいります。
誰もが認めるとおり、農業にかかわる皆さんには、「農を守ることは地域を守ること」「先人の知恵と努力は地域の財産」との想いが脈々と受け継がれており、こうした意欲に応えるためにも、種別、形態、地域実情だけでなく、生産基盤の整備、人材の確保と育成、安心・安全な農畜産物の安定供給、需要・販路の拡大といった生産から流通の過程におけるさまざまな現状、あらゆる課題を調査・分析し、引き続き効果的な支援策を講じる必要がございます。
プロジェクトの関係事業として、栽培・出荷等の助言指導を行う営農指導員の配置、食農教育やイベントの実施、牛舎整備や和牛導入への支援に加え、農林振興公社を核とした農産物の集荷と直販、新規作物の開発・普及など、独自の取り組みを展開しております。成果として現れるのは、これからという段階ではございますが、農家の皆さんと力を合わせ、工夫し、続けることで新たな地域農業の姿を描いてまいりたいと考えております。
3つめは、「観光振興、定住促進プロジェクト」でございます。
本市の入込観光客数は、自然志向の高まりと豊富な観光資源を背景として安定的かつ増加傾向で推移し、私自身、中国山地の山々や里山文化に育まれた景勝地、丘陵公園・温泉施設といった新たな観光施設、各地域で開催される多彩なイベントを訪れた際、満喫感と笑顔にあふれた多くの人々に出会い、驚きと喜びを感じております。しかしながら、経済効果や一人当たりの観光消費額においては、伸び悩んでいるのが実態であり、今以上に「知ってもらう」「来てもらう」「感じてもらう」ことを前提としつつ、そこに「泊まってもらう」「食べてもらう」「買ってもらう」という視点を加えて、儲かる観光、儲ける観光への道筋を切り拓く必要がございます。
市民の皆さんが自ら考え、行動する小さな観光事業を応援するため、新たに起業支援補助制度を設け、今年度、農家民泊や釣り堀、農家レストランの整備など、5件を採択したほか、関係事業といたしまして、観光バスツアーの実施、公共施設への案内機器の設置など、情報発信を中心とした取り組みを進めております。
今後も、都会人の意識に羨望を与える美しい自然景観、生活文化に彩られた里山環境をはじめ、すべての地域資源を見つめ、結び、さらには市民の知恵と力を喚起しながら、観光産業化の確立に努力してまいります。
本市の住民基本台帳人口は、昨年12月末現在で42,533人と、1年前の同月末に比べ620人の減少となっております。3月末から12月末までの年度内においても274人の減であり、残念ながらその傾向を食い止めるには至っておりません。ただ、年度内の減少・274人のうち、転出者と転入者の差、いわゆる社会減は49人となっており、同じ期間で比較した場合、平成17年度の81人、18年度の76人からは改善の兆しも見受けられております。
日本の総人口が減少へと転じる中、高齢者比率が50%を超え、社会的共同生活の維持が困難と定義付けられた「限界集落」の増加が懸念されており、本市にも該当地域が所在することはご承知のとおりでございます。こうした現実を誰も望んでいないことは明らかですが、一方では「自分たちは何とかなるから、好きなことをしなさい」と我が子を育て、都会へ送り出した方も少なくはなく、そうした過去を振り返れば、誰もが「予想できた結果」であることも認めざるを得ません。しかし、過疎化の背景には、高度経済成長期における都市部への人口流出、今日における経済のグローバル化や交通・交流事情など、さまざまな外部環境の変化が指摘されており、加えて価値観や生活観の違い、就労の場や住居の確保といった個々の要因も所在することから、誰も責めることはできませんし、それだけ人口の維持・増加が容易でない挑戦であることにほかなりません。
これらの状況を踏まえつつも、私たちは、できること、しなければならないことを行政・地域・家庭の立場で改めて考え、暮らしを、地域を、そして「ふるさと」を守り、未来へつなぐ使命を負っております。
定住プロジェクトでは、「帰ってこいや待っとるよ」という視点を持って、本市で生まれ・育った出身者が抱く「望郷の想い」を呼び覚ますとともに、その想いを受け止める環境づくりを重視しており、特に期待を寄せる自治振興区では、一部地域において「ふるさと情報」の発信や交流事業、対象者の把握など、精力的な諸活動も展開されております。そのほか、就職相談会の開催や出会いのサポート、庄原応援団の結成、「ふるさと大使」の任命など、多様な事業に着手しており、一人でも多くの帰郷・定住が実現するよう、粘り強く取り組んでまいります。
多くの皆さんからご意見、ご理解、ご賛同をいただく中で、新庁舎建設の本格工事が始まりました。合併から3年。分散した本庁組織や手狭な施設状況により、市民の皆さんに負担・戸惑いをおかけしておりますが、順調に工事が進めば、来年2月末には、「未来への道しるべ」として、また、「ふるさとの灯台」として機能すべき行政拠点が完成いたします。
しかし、当然のことながら施設整備のみをもって拠点とはなり得ず、私をはじめ、職員個々が果たすべき役割を自覚し、資質向上・スキルアップに努めながら、全体の奉仕者、住民福祉の底力として、その能力を発揮・活用しなければなりません。さらに、行政と市民の「協働意識」に基づく行政運営、実践活動が求められる中で、行政のプロである職員や組織は、プロであるが故の固定観念にとらわれる傾向があることも事実でございます。そこに市民の柔軟な発想や新鮮なアイデアが加われば、きっと良い方向に進み出すと思いますし、市民も「お任せ体質」で行政に要求するばかりでなく、自分たちのできることを考え、行政と向き合い、ともに歩む姿勢を持つことが「協働」の第一歩であると思うところでございます。
合併効果として期待される定数削減、不安定な財政状況、事務の高度化・複雑化、多様な住民ニーズや山積する地域課題など、職員・職場を取り巻く環境は、年々、厳しさを増しておりますが、私が先頭に立って声を出し、知恵を巡らせ、喜びを見つけながら新たな扉を開いてまいります。引き続き、ご理解・ご協力をお願いいたします。
次に平成20年度予算編成の基本方針について、ご説明いたします。
「いざなぎ景気」を超えたとされる一昨年の秋以降、回復基調での景気動向が伝えられておりますが、本市においては、企業収益や設備投資、雇用情勢などを見ましても、その実感・実益を得るに至っておらず、市税収入は、法人市民税の減収を含めて横ばいを見込んでおります。また、都市と地方の税収偏在を是正し、新たな財源を地域振興策に充てるため、普通交付税の特別枠として「地方再生対策費」が創設されました。財政状況の厳しい地域に重点配分されるとのことであり、適正な算定・運用が望まれております。
合併から4年目を迎えるに当たり、情報基盤や生活基盤の整備、教育・福祉の充実、地域産業の再興など、将来像の実現に向けた円滑な事業進捗が要請される一方で、平成18年度決算による本市の財政状況は、経常収支比率97.5%、実質公債費比率22.3%と、いずれも前年度比較で悪化しており、引き続き「持続可能な財政運営プラン」に基づく歳入確保と歳出抑制に留意した予算編成、財政運営が求められております。
これらの経過・状況を踏まえ、新年度においては「長期総合計画の実施計画に沿った事業実施」、「重点プロジェクトの推進」および「財政健全化への取り組み」を基本に掲げ、普通建設事業の計画的実行、福祉・教育・産業・定住分野への集中投資、地方債発行額の抑制、事業手法の見直しなど、厳しいながらも新たな第一歩を踏み出す意図をもった予算編成に努めたところでございます。
特に、施設の老朽化や安全確保への対応として、毎年、保護者の皆さんから要望をいただいております保育所・小中学校の部分改修、並びに器具・備品の購入・更新を新年度の緊急事業に位置づけ、関係予算として、保育所で5,500万円、小学校で9,200万円、中学校で1億1,900万円あまりを盛り込み、子どもたちが、集い・遊び・学ぶ環境の充実・向上を図ることとしております。
また、高齢者の皆さん、重度障害者の皆さんの在宅生活を支え、不安の解消に努める趣旨から、ひとり暮らし高齢者等を対象とする巡回訪問を月4回程度に増加するほか、福祉タクシー券の対象者および交付枚数の拡充と利用制限の緩和、重度心身障害者・在宅介護手当の支給要件の見直し、障害者相談支援員の増員など、福祉分野での予算・事業にも配慮しております。
なお、一般会計の予算規模は、314億6,270万円で、平成19年度の当初予算を10.3%上回る積極型の内容となっております。
それでは、長期総合計画に掲げた基本政策の体系に沿って、主要事業等に関し、ご説明申し上げます。
まず、自治・協働の分野「協働の力で、笑顔が輝くまち」でございます。
一体感の醸成とともに「協働」・「補完」の意識が浸透しつつあり、地域における前向きな姿勢や活発化する自治振興区活動に勇気と元気をいただいております。
新年度においては、さらなる実践活動の推進と協働意識の高揚を図るため、その理念や市民・議会・行政の役割などを示す「まちづくり基本条例」の制定に着手いたします。また、庄原地域の地区公民館を自治振興センターへ移行し、地域活動の中核的な拠点機能を有する施設としておりますが、他の地域につきましても、庄原地域での成果を踏まえ、該当地域の意向を尊重する中で、施設機能の見直しを検討してまいります。
自治振興区の活動支援として、振興交付金・活動促進補助金の交付、地域集会所の整備助成を継続するほか、除雪機械の導入計画が最終年度を迎え、全153台の配備が完了いたします。また、「とうじょう自治総合センター」の整備に関し、その具体化を図るため、規模・機能・事業費等を含む基本計画の策定を予定しております。
行政と市民の情報共有・直接対話は、「協働のまちづくり」において基本となるべき取り組みでございます。全戸配布の広報紙、支所管内におけるオフトーク放送等の充実に加え、市政懇談会や出前トーク、ふれあい市長室の各事業を継続し、意見聴取の機会拡大に努めてまいります。
基本的人権が尊重され、女性がいきいきと活躍できる環境は、あるべき地域社会の姿でもございます。その実現に向けては、正しい知識と理解に基づく意識の醸成、積極的な態度と参画が求められることから、引き続き、学習機会の提供、講演会の開催など、啓発事業を推進してまいります。
市民負担の公平性を確保するためには、市税等の滞納を「発生させない・許さない」という姿勢とシステムが必要です。特別徴収班、収納対策本部の機能強化を図るとともに、平成21年度から身近なコンビニエンスストアでの納付が可能となるよう、諸準備を進めてまいります。
職員定数の削減が要請される中、行政経営改革では、人的資源の効果的活用を前提に、事務処理の手法見直しを含む徹底した事務改善に取り組みます。
新市建設計画並びに長期総合計画でお示しした各種施策を具現化するため、財政計画との整合を図りつつ、平成22年度から27年度までを対象とする「後期実施計画」の策定に着手いたします。なお、後期計画においては、一体的発展の趣旨も踏まえて全域・地域別の事業設定は行わず、都市機能の充実・強化、定住・交流の促進、また、老朽化が指摘されております学校・保育施設等の整備を中心に検討してまいりたいと考えております。
次に、産業・交流の分野「さとやま資源の活用で、地域が輝くまち」でございます。
本市におきましても、基幹産業である農林業をはじめ、商業、鉱工業、サービス業など、さまざま分野での生産活動が営まれ、地域経済や市民生活を支えております。
農業分野では、生産基盤の整備事業として、既に着手しております西城・高野地域での「ほ場整備」、ため池・水路・農林道の全域的整備を予定するとともに、農業自立振興プロジェクトとの協調・連携を図る中で、大規模園芸施設の建設助成や農業外企業の参入支援、生産法人の設立と育成、中山間地域等直接支払交付金の効果的活用、農地等の保全活動にかかる負担金拠出、優良和牛の導入促進など、新たな農業形態として期待される農商工連携の実践・強化に留意しつつ、国・県制度と独自施策を組み合わせながら、基幹産業の再興に努めてまいります。
林業関係につきましては、県民税を財源とした「森づくり事業」の本格実施に併せ、既存の鳥獣対策、地域活動への支援等を継続し、里山環境の形成と有害鳥獣の防除対策を進めることとしております。
商工業分野では、「市民総ぐるみで働く場を確保する」という趣旨から、新たに「企業誘致成功報酬制度」を設け、市民の親戚・知人など、あらゆる人脈を駆使した斡旋・仲介によって企業誘致の実現をめざしてまいります。また、中小企業の設備投資助成、工場立地を対象とした課税免除制度の創設、商工会議所・商工会の運営支援、さらに庄原・東城両市街地の賑わい再生にかかる市民活動の促進と拠点施設の整備を予定しております。観光・交流の面では、案内施設に設置した機器を活用し、季節に応じた観光情報を発信するほか、各地で実施される多彩な地域イベントを支援してまいります。
県立広島大学の研究開発助成については、地元企業との連携によって実用化・製品化が具体化している事業もあることから、新規採択を含めて継続することとしております。
次に、環境・基盤・定住の分野「自然との共生で、暮らしが輝くまち」でございます。
昨年、本市と友好関係にあります中国・綿陽市を訪問いたしました。ご承知いただきますとおり、「市」と申しましても面積が20,000平方キロメートル・広島県の約2.4倍にも及ぶ広大な区域でございまして、中心部と農村部では、生活環境が大きく異なっております。その折、市政府の案内で北部の山あい・農村部を訪れましたが、寂寞(せきばく)とした大地の傍らに「国家プロジェクトとして、高速通信ケーブルを埋設している」との説明を受け愕然といたしました。
日本も通信基盤の整備を国家戦略として明言しておりますが、国が直接、施行するのではなく、区域面積、事業規模、財政力等にかかわらず定率助成のみで自治体に事業実施の選択を求め、結果的に、広大な区域、膨大な自己負担を要する地域と都市部との情報格差を引き起こしております。
新市建設計画の柱のひとつとも言える「CATV事業」は、その重要性・必要性・地域要望等から、実施・実現を前提に手法・財源調達を含めたさまざまな検討を行ってまいりましたが、90億円を超える事業費と財政状況を踏まえ、「凍結」との判断をいたしました。しかし、情報化社会や地上デジタル放送への対応は、待ったなしの状況にあることから、ひとまず、その代替事業として、NTTの局舎改修によるADSL対応区域の拡大、テレビ共聴受信施設の整備助成などを予定しております。
自然環境の保全と循環型社会の形成が求められる今日、「ごみ」の減量化や分別収集、リサイクル活動にご協力をいただく一方で、悪質な不法投棄が後を絶たない現状があることから、監視体制の強化に加えて抑制看板や監視カメラを設置し、法的措置も含めた対策に取り組んでまいります。
道路整備については、路線の機能や事業規模に応じて交付金や有利な起債を充当する中で、長期総合計画の実施計画に基づく一般市道40路線、西城・東城の市街地市道を含む街路4路線を予算計上しているほか、庄原市街地においては、「都市再生整備計画」に基づく賑わい創出事業として、市役所前を横断する東新町宮の下線の整備に本格着手いたします。なお、道路特定財源の行方が気がかりではございますが、工事が進められております「中国横断自動車道・尾道松江線」につきましては、引き続き、事業協力と早期開通に向けた要望活動を行ってまいります。
生活交通関係では、利用実績・費用面での課題を抱えながらも、民間の路線バスをはじめ、各地域で独自運行する循環バス・生活バス、予約乗合タクシーを維持し、交通弱者への対応を図ってまいります。
住宅整備については、引き続き「口和中央ハイツ」の建設を予定するほか、火災報知器の設置、下水道接続を計画的に進めることとしております。
水道事業・飲料水の確保につきましては、庄原地区の第7期拡張計画に基づく配水施設の整備、井戸掘削の経費助成を継続するとともに、東城三坂地区の簡易水道を水道事業へ統合する本工事を予定しております。
下水道関係では、東城市街地の公共下水道事業、庄原市街地の周辺区域を対象とした特定環境保全公共下水道事業、流入量の増加に対応する処理槽の増設に加え、高野湯川地区での農業集落排水事業を継続いたしますが、これらの集合処理方式は、既存事業をもって終了を予定しており、今後は、合併浄化槽の普及・整備によって水質の浄化と生活環境の改善に努めてまいります。なお、新年度において、下水道事業の経営健全化に向けた「中期計画」の策定に着手いたします。
消防・防災体制につきましては、消防ポンプ・積載車・防火水槽・格納庫などの消防施設を計画的に整備・更新するほか、消防団員の防寒服、装備等の充実を図ってまいります。
地域防災の面では、法面保護、急傾斜地対策、河川の維持・改修等を予算計上しており、防犯関係では、生活安全相談員を継続設置するとともに、警察、市民団体との協力・連携を強化しつつ、諸活動の推進に努めてまいります。
次に、保健・福祉・医療の分野「心と体の健康づくりで、命が輝くまち」でございます。
少子・高齢化の進行に伴う福祉・介護経費や医療費の負担増が深刻化する中、国は、既存制度の定着を待たず毎年のように関係法令等の見直しを行い、後期高齢者医療制度の導入をはじめ、健康診査の受診率設定、介護予防への移行と民間事業者でのケアプラン作成制限、実態に沿わない障害者の自立施策など、当該分野における国の政策は、極めて不透明、不安定な状況で推移していると認識しております。
また、福祉の原点は「しあわせを感じること」と理解しており、通常、公的配慮によって実施されております。しかし、すべてが国家・行政によって「与えられるもの」ではなく、特に「お互いさま」と声をかけ合い、近隣・地域が支え合う互助・共助の暮らしが少なからず成立する本市にあっては、誰もが福祉を考え・行動する基盤がございます。現在、地域福祉計画の策定に取り組んでおり、そうした地域的利点も踏まえた福祉のまちづくりを進めてまいります。
児童福祉の分野では、高保育所への浄化槽設置、多様な保育需要へ対応する三日市保育所の増築、エアコン整備を含む保育施設の改修を予定するほか、子育て家庭が集う場の提供、放課後児童クラブの運営、出産祝い金等を継続し、地域の宝である子どもたちが、笑顔で成長できる環境整備に努めてまいります。
高齢者福祉および介護保険施策は、関係法令に基づいて各自治体が定める事業計画に沿って実施しております。新年度は、計画改訂の年に当たりますが、介護保険制度の円滑運用のみならず、ひとり暮らし高齢者等を対象とする巡回相談の充実、緊急通報装置の給付、シルバー人材センター・老人クラブの活動助成、健康づくりと介護予防事業など、引き続き、高齢者の皆さんが住み慣れた地域で、安心して暮らし・活躍できる「ふるさとづくり」に取り組んでまいります。
一方、国の対症療法的な医療政策の中で、高齢者の皆さんに保険料の負担をお願いする「後期高齢者医療制度」がスタートいたします。特別会計の設置、拠出金の負担、広域連合への職員派遣等を予定しておりますが、制度の周知と円滑実施に加え、生活や健康に不安を抱える高齢者世帯、とりわけひとり暮らし高齢者世帯への目配り・気配りに努めてまいりたいと考えております。
障害者福祉の分野では、「障害者自立支援法」の抜本的な見直しが全国的にも大きな課題として指摘され、障害者の皆さん、関係者の皆さんはもちろん、自治体においても困惑している状況にございますが、障害者プランの一部見直しをはじめ、新制度の円滑運用と既存制度の拡充に留意しながら、生活、自立、就労等の視点から各種支援事業を実施することとしております。
保健・医療の分野では、緊急かつ最重要課題として位置づけ、繰り返し要望しております市内医療機関での出産再開が未だ実現に至っておらず、そればかりか西城市民病院においても精神科の医師確保が困難となり、運営形態の変更を余儀なくされております。こうした特定診療科の医師不足、病棟の休止は、今や中山間地域だけでなく地方の中都市にまで拡大しており、一時的には県が示した「医療の集約化」を容認せざるを得ませんが、国家的課題として、引き続きその正常化を強く要請してまいります。なお、妊婦一般検診にかかる受診券の交付拡充に加え、小児救急医療の体制確保、乳児健診・歯科健診の実施、本年7月末日までではございますが、乳幼児・ひとり親家庭等の医療費助成に関し、拡大措置を継続することとしております。
次に、教育・文化の分野「ふるさとを愛する心で、人が輝くまち」でございます。
庄原地域、比和地域の小学校統合により、市立学校は、小学校21校、中学校8校の体制で新学期が始まります。歴史ある地域の学校が姿を消すことは、関係者の皆さんはもちろん、私にとりましても寂しく・厳しい選択でございましたが、子どもたちの良好な教育環境を確保・構築することもまた、大人の責任であることから、学校再配置は、終わりではなく新たな「旅立ち」と捉え、皆さんとその成長を導き・見守ってまいりたいと存じております。なお、再配置の対象区域にあっては、スクールバスの運行等により、通学支援を行うこととしております。
学校教育においては、「知・徳・体」の基礎・基本の徹底と信頼される学校づくりに向け、指導主事、学校教育専門員、相談員等を配置するとともに、情報機器の計画的整備を進めてまいります。なお、西城・高野地域の共同調理場が本年3月末の完成予定であり、新年度から西城中学校でも完全給食を実施いたします。施設関係では、比和小学校・屋内運動場の実施設計、耐震化計画に基づく西城中・東城中・総領中の屋内運動場等の補強工事、また、板橋小学校への特別支援教室の増築や庄原中、庄原小、口南小ほかでの部分改修・エアコン設置等を予算計上し、教育環境の整備・向上に努めてまいります。
庄原地域では自治振興センターへの委託事業、他の地域では公民館の自主活動として市民の皆さんの生涯学習を支援してまいりますが、当該分野は、関係法令の一部改正に伴い、教育委員会の所管する事務・事業の大半を市長部局で担い・執行することが可能となっております。多様な学習成果を地域に還元し、住民活動や地域社会に活かす視点をもって事務移管を進めることとし、新年度は、市民・関係者への説明と理解の促進、関係条例の整備等に取り組みます。
田園文化センターの図書館は、これまで祝日を休館としておりましたが、新年度から開館とし、利便性の向上を図ってまいります。芸術文化関係では、市民会館の自主事業として、グランプリコンサート、舞台芸術などの公演を企画するほか、地域の優れた文化を知り・伝え・活かすため、4年に1度の比和牛供養田植公開事業への支援、継続事業として、市内の民俗芸能大会や文化財めぐり、子ども文化財探検隊などを予定しております。
国際交流では、「国際交流協会」「日中親善協会」への参画と支援。中国綿陽市との友好交流については、行政関係者の受け入れ、青少年の訪問を計画しております。
最後に、重点戦略プロジェクト「みどりの環経済戦略ビジョン」でございます。
3つのプロジェクト事業を掲げ、精力的かつ継続的に取り組んでおりますが、いずれの事業も困難・課題を抱えていることはご理解いただけるものと存じます。こうした中にありましても、農林業分野における平成18年度と2年前・3年前との指標比較では、農業・林業・畜産の各産出額、農家1戸当たりの農業所得額が、いずれも増加しているほか、バイオマス関連での工場立地や相次ぐ視察の受け入れなど、徐々にではございますが成果と展望が芽生えつつございます。
バイオマス関係では、ペレットボイラーを本庁舎へ設置するほか、ペレットストーブの公共施設導入、個人購入に対する助成制度の創設などにより、木質ペレットの需要拡大を図ることとしております。
農業プロジェクトでは、営農指導員の増員、かんたん就農塾のコース拡充など、継続事業の充実を図るほか、農家所得の向上策、営農意欲の助長策として、小規模農家を対象とする機械・器具等の購入助成、エゴマ商品化施設の整備支援など、新たな事業展開も予定しており、農林振興公社との連携強化を含め、「がんばる農業・がんばる農家」を応援してまいります。
観光関係では、備北丘陵公園の北入口オープンを契機として、観光客の市街地流入・消費拡大を促進するため、誘導イルミネーションの設置、空き店舗を活用した起業支援、まちなかイベントの開催、観光バスツアーの本格実施などを計画しております。
定住プロジェクトでは、自治振興区による帰郷促進活動、コミュニティビジネスの創業支援、地元企業の雇用説明会、出会いサポート事業など、地域・企業・行政が一体となって関係事業を推進するとともに、活動の成果として帰郷定住が実現した自治振興区に対し、交付金を交付することとしております。
以上を主要事業として掲げ、平成20年度の予算編成を行ないました。
自治体は、いつの時代にあっても、また、どの地域にあっても、その内容に違いはあるものの多くの課題を抱えております。行政運営にかかわった先哲の誰もが、なかなか追いつくことのできない「もどかしさ」を感じながらも、ときに早足で、ときに着実な前進によって困難を乗り越え、自治の歴史を重ねてこられました。今を生きる私たちも、新しい時代の物語を綴るため、決して諦めることなく挑戦を続け、課題を克服して行かなければなりません。
「世に生を得るは、事を成すにあり」。幕末の混乱期から大政奉還、明治維新へと、まさに時代を切り開いた志士・坂本龍馬の言葉でございます。「この世に生まれた限り、何かをしたい」。誰しも思うことですが、その「何か」とは、必ずや市民・地域の幸せに結びつくものであるはずです。
私は、「誠の心」もさることながら、あえて「正しい心」を用いた「正心誠意」を座右の銘としております。冒頭で触れました偽装事件などの報道に接するとき、改めて「正直な態度」「ごまかさない姿勢」が信頼を生み、感動を呼び、人の心を動かす原点であると思うところであり、引き続きこの信念を堅持しながら、市民の皆さんが幸せを感じ、夢をもち、誇りをもって「美しい日本のふるさと」と呼ぶことのできる地域社会の実現に努力してまいります。議員各位、並びに市民の皆様には、今後とも、一層のご支援とご協力をいただきますよう、重ねてお願い申し上げます。
なお、予算以外の議案として、「庄原市特別職の職員および庄原市教育委員会教育長の給料月額の特例に関する条例」など、条例案25件、庄原市過疎地域自立促進計画の変更など、その他12件を提案しております。
どうか、慎重なご審議をいただき、適切なご議決を賜りますよう、お願いいたします。